対岸の原発設置に28年間反対し続ける、素朴だが明るく力強い祝島の島民の生活を歳時記風に綴った飾り気のないドキュメンタリー。祝島の500人ほどの住民の多くは高齢者だが、それぞれが漁業と農業の第一線に立つ現役の働き手だ。彼らは大自然の営みに寄り添って生活することで、そして常にそれに感謝の気持ちを忘れず、骨惜しみせずに働くことで自然から溢れんばかりの恩恵を授かることを熟知している。またその豊かさは決して金で買うことができないことも。10億円の交付金を拒否し続けている彼らに、町長は議会で町の将来のために是非原発誘致が必要と言っているが、それがどれほど虚しいものであるか、この作品をみれば理解できる。
私は彼らに主権在民の立場を主張する、真の住民の姿を見る思いだ。誤った政策をとる地方自治体に対して、人間の尊厳をかけて断固として闘う姿勢をみせる彼らに、心から賛同の意を表したい。そして当然のことながら、国家が長期的な展望に立った国民の利益を考えるなら、金ではなく純粋な議論の積み重ねで説得すべきではないのか。交付金の問題ひとつをとっても、政府がいかに安易な方法で原発を推進しているかは明らかだ。ましてその金が全国民の血税から捻出されていることを考えれば尚更だ。そこには住民尊重の理念も哲学もない。しかし祝島の反対派の人々は、確固とした信念と将来への展望を一貫して持ち続けてきた。
島民の中には勿論原発推進派の人もいる。後半のインタビューでは、この問題でそれまで和気あいあいに助け合ってきた仲間同士に亀裂が入ってしまったことを、彼ら自身非常に残念に思っていることも忌憚なく語られている。対岸の原発は2012年6月に着工予定だ。だが幸い彼らの表情は明るく、全く覇気を失っていないどころか、ますます原発反対に気勢を上げている。私達が将来原発問題に対してどのように対応し、その回答がどこにあるかを考える上で非常に示唆に富む作品だと思った。