著者がいわゆる皇室専門ジャーナリストでない分、ドキュメントとして皇后を真摯に追おうとする姿がいい。
当人にインタビューができないのが残念だというけれど、それでも1998年のIBBY講演や、御歌集「瀬音」をヒントに、美智子皇后の人となりを形成していく作りは、余計な思い入れがない。それでも温かく思いやりに満ちた、稀有な人物像が浮かび上がってくるのは、やはり並みの方ではないからだろう。
最初の方で出てくる、長野パラリンピックにおける、天皇皇后両陛下のウェーブの話は良かった。皇后が全身で少女のように喜びを表したという一節に、本当の美智子様を知った気がする。皇太子妃として、身障者のスポーツ育成を支援し、力を注いできたことがようやく、このときに結実した感激があったのだと拝察される。そして、ご自身は正面の席の小学生の演奏者たちが飛び跳ねて喜ぶさまが面白く(かわいくて?)、それで何度もウェーブに加わりました、などという感想が、恐れ多いことながらお茶目な感じがして微笑ましかった。
また、当時の皇太子が入内に悩む美智子様に伝えたといわれるお言葉に、「自分は境遇から人に対して配慮が足りないという懸念がある、それを思いやりの深い人に補ってもらえたなら」というのがある。もちろん美智子様がご自身を「思いやり深い人」と思われたのではないだろう。そういうことまで心を砕かれる皇太子様を信頼したのだと思う。
やはり、皇室に嫁ぎ人々の敬愛の的となられる方は、学歴やスポーツ、芸能などの才能よりも先に、思いやりの深い方であることが最大の条件なのだということを、この本で教えられた気がする。