著者の他の作品もそうだったが、丁寧かつ諦めない取材に基づいているのがわかる。この本を読みながら、「知らないところでそんなことが起こっていたのか!」と驚かされ続けた。これまで一般のメディアが突っ込んでこなかったところまで、著者が踏み込んでいったということなのだろう。
実際に見聞きし、確認できた話を、「読者に対して誠実であるかどうか」に照らして作品をまとめ上げていると感じる。想像ではあるが、政治や権力がらみの取材/執筆のときに、被取材者および周辺関係者の思惑に引きずられない姿勢を貫くのは容易ではないはず。読者としてはありがたいことである。
本書は、万人が気持ちよく最後のページを閉じるタイプの本ではないと思う。生々しい事実を前に、私たちの常識や「臭いものにフタ」をしたい保守的な気持ちを刺激されるからだ。しかし、そうした事実を目の前にした上で、地に足のついた話(思考)ができるきっかけをくれる本であることは確か。目の前の問題にすぐに「白黒」を付けることに慣らされてしまった人が多いなか、このようなタイプの本に価値があるように思う。