税理士が経営計画を立てる際に目標利益を最初に設定するのは、
著者が言うようにBSを偏重するからでもPLを軽視するからでもなく、
キャッシュフローを重視しているからだと思う。
中小企業の資金調達は借入金が主体で年間の返済額が決まっており、
その返済財源は基本的に利益しかない。
従って最低限確保すべきキャッシュフローとして返済額を基礎とした目標利益を設定する必要があり、
経営計画において、この数字は必達利益として重要な意味がある。
ここを出発点として、販売戦略を含む経営戦略全体を(前期比増減ではなく)ゼロベースで作り上げる
というのが本来の経営計画立案のプロセスだと思う。
会社は税理士の言うとおりにするからではなく、資金繰りがつかなくなるからつぶれるわけで、
特に借入金依存度の高い中小企業の場合は、キャッシュフローが極めて重要であると思う。
しかし残念ながら本書には、キャッシュフローのことが全く書かれていない。
本書の論理展開から考えると、著者自身が十分理解していないことが理由だと思う。
著者が本書の中でビジネスモデルとしている成長マトリックスは、
製品市場戦略の4つの方向性を示したもので、言うなれば販売モデルであり、
著者がゼロベースで立てるべきとする経営計画も、内容としては販売計画に過ぎない。
要するに本書は(税理士に関する部分はともかく)、
ビジネスモデルや経営戦略の一部分としての販売戦略の本である。
販売戦略としての手法や指標については、確かに参考になるものが多いと思う。
しかしながら、
その他の経営戦略やキャッシュフローを十分に考慮していない販売戦略だけが功を奏しても、
事業経営全体がうまく行くという保証はない。
本書のタイトルに何らかの危機感を覚えて本書を購入してしまう経営者がいるとすれば、
税理士の言うことではなく、この本のとおりに実践したとしても、
それだけで会社がつぶれないとは言えないという点は、十分に認識すべきだと思う。