「社会的包摂」(social inclusion)の対概念であるいわゆる「社会的排除」(social exclusion)概念に関する概説書。と云えば何のことかという気もするが、今日の貧困問題をより広い社会的歴史的文脈の中で分析した一書と云えば、分かりやすいかも知れない。
私などはこれまで今日の日本における「貧困」というと、いわゆるホームレスやネットカフェ難民、派遣労働者といった方々のようにそもそも定職を持てないあるいは適切な賃金を受け取ることのできる職を得られないといった「雇用」の観点からのみ物事を見がちであったが、本書を読んでそれはそう単純な問題ではないこと、即ち、貧困をはじめとする「社会的排除」は雇用のみならず家庭や教育、福祉、地域社会、医療体制等々のより広範な事象が複雑に絡まり合った社会的歴史的な「複合問題」であることに気付かされた。(だからこそ問題の根は深く、勿論雇用増のための経済的な諸施策も重要ではあるにしても、その本質的な解決は単に雇用を増やせばといった呈のものではないことがよく理解できる。)
その意味で、今日の様々な社会問題を複眼的に理解するための鍵概念として、「社会的排除」あるいは著者のいう「社会からの引きはがし」と「中途半端な社会への接合」、更にはこれらを主に住環境との対応関係で再整理した「転落型」、「労働住宅型」及び「長期排除型」といった概念整理は、「大づかみ」な括りとして近時ますます有効性を増してきているように思えてならない。