首相の菅直人が「朝日」などに唆され、昨秋、突如「平成の開国」などと称して憑かれたように叫びだしたTPP(環太平洋経済連携協定)への参加問題だが、昨年の10月21日には、早くも山田正彦元農水相等によって「TPPを慎重に考える会」という超党派の勉強会が発足している。さらに、今年に入って山田代議士や久野修慈・中央大学理事長、榊原英資・青山学院大学教授等を世話人とする「TPPを考える国民会議」が2月24日に設立され、理論経済学の泰斗で当書の著者でもある宇沢弘文・東京大学名誉教授が代表世話人に就任された。
TPPに対する宇沢先生の考え方は、『
TPP反対の大義』(農文協編,2010年12月)の巻頭論文「TPPは社会的共通資本を破壊する−農の営みとコモンズへの思索から」で明快に述べられており、先ずはそちらを読んでいただければ、と思う。この宇沢先生の“異議申し立て”に関して、たとえば教え子である池田信夫あたりが「宇沢弘文氏の奇怪な農本主義」と題して、「人間は年をとると幼児に返るという」などと悪態、雑言を並べ立てたりしている(2/26のブログ)。要は、「新自由主義」や「市場原理主義」などへの批判がお気に召さぬらしいのだ。
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池田の当該記事では、慎重に(?)「社会的共通資本(social common capital)」への言及は避けているが、この「社会的共通資本」というものを平易に論じたのが本著であり、初版はまさに世紀の変わり目の2000年であった。「社会的共通資本」とは、大きくは自然環境、社会的インフラストラクチャー、制度資本を指し示し、「一つの国ないし特定の地域に住むすべての人々が、ゆたかな経済生活を営み、すぐれた文化を展開し、人間的に魅力ある社会を持続的、安定的に維持するすることを可能にするような社会的装置を意味する」(本書はしがき)。
こうした意想に立って、宇沢先生は当著で「農業と農村」という一章を設け、「農業という概念規定より、むしろ農の営みという考え方にもとづいて議論」(同p.47)を具体的かつ説得的に展開している。詳しい内容については本書を熟読していただくとして、一点だけ付け加えたい事がある。それは「社会的共通資本」の論理を支える政治哲学で、宇沢先生はその主柱をリベラリズムに措いている。私は、「社会的共通資本」の論理に親和性のある政治哲学として、コミュニタリアニズムの思想に立脚する方がより整合的ではないだろうか、と考えている。