現代のメディア環境を批評的に認識するための本。第1章では、新しいメディアの出現が「旧世代」からのバッシングを引き起こすのはなぜか?という問題提議から、「メディアは身体化される」というテーゼを打ち出しその身体的能力の獲得や運用に着目することが重要であると述べこの著書全体をつらぬく視点を提供する。こうした切り口はけっこう面白かった。第2章では、「ネットの普及はテレビの影響力を減退させる」といった俗説に対し、むしろネットにそなわったネタ共有機能はテレビをはじめとする巨大メディアの存在意義をこれまで以上に強化する、と指摘。これは中川淳一郎氏の傑作『ウェブはバカと暇人のもの』(光文社新書)でもより明解に説明されていた論点であるためか、著者の議論はややまどろっこしい感じがした。第3章ではテレビ時代における「お笑い」の変遷を概観しつつ、多くの視聴者がコミュニケーション的に「消費」しやすい一発芸、キャラ芸が現在流行していることの意味を問う。これに続けて第4章では、まるで「ゲーム」のように「楽しい」からこそ皆が参加する、ネット社会における新しい「社会運動」の構造を分析する、となかなかあわただしい立論が続く。
全体としては読みやすくて勉強にもなるのだが、なにか「さらさら」と読めてしまいすぎて刺激や驚きに乏しくもあった。ネットやテレビを中心とするメディア上の各種コンテンツをたっぷりと楽しみ、だが一歩引いて、現代思想や社会学の知見を武器にしながら目前の現象にそれらしいコメントをする、というタイプの「社会的身体」は相変わらず顕在だなあ、という印象は強かったのだけれど。