章ごとのテーマに沿って社会学的思考や理論を紹介していく形式の社会学の入門書という事でどうしても世界的に著名な社会学者アンソニー・ギデンズの方の「社会学」と比べてしまう本書ですが、表紙に「Sociology:Modernity,Self and Reflexivity」とあるようにモダニティや再帰性といった現代社会に対するギデンズの理論的立場が本人の「社会学」以上に鮮明に打ち出されています。両者を比べるとギデンズの「社会学」は章ごとのテーマを中心にしているのに対して、本書は章ごとのテーマをそれぞれ事例として現代社会で起こっている「近代的なもの」の再構成を描きだそうとしているような印象を受けました(もちろんこれは「比較」によって受けた印象です)。
ギデンズのそのような理論的立場は社会学の理論家の共通の問題意識である「近代」に対する現時点での総決算のようなものですからその立場に立っても社会学全体の教科書としての役割は十分に果たせますのでこの点は問題ないように思います。
恐らくこのような教科書の用途は大学の学部生あるいは教養としての学びか、あるいは大学院入試に向けての勉強のためのかの二通りに大別されるでしょう。
そのような用途別に考えた場合、前者のような用途の場合にはギデンズの「社会学」の方が、後者のような用途の場合は本書の方が、それぞれ向いているように思われます。
ギデンズの社会学は個別のテーマにそってより広く多くの視座を説明している分、卒論やレポートのネタ探しには便利ですし、グローバル化を中心に今日問題となっている事柄に注目しているので社会学の基礎的な知識が無くてもすんなり入って行けます。
しかしながらその分、量が多く、繰り返し読むのはかなりつらい上に個々の理論家に対する言及が分散しており、学説史的な「流れ」をつかみにくいため、そのような学説史的な知識を要求する大学院受験のための教科書として使うには少し難しいのに対して本書はテーマに対する具体例(これはちょっと古臭かったり、狭い範囲であったりとちょっとひどいレベルです)や扱う視座の広範さに劣る分、何度も繰り返して読める分量であり、また近代という時代の特徴、現代におけるパラダイムシフト、それに伴う再構成と一貫した流れに沿って著名な社会学者の理論が抑えられているので大学院入試にはかなり適したテキストであるように思います。
いずれにしろ社会学の教科書は沢山出ていますが、本書はこれから定番となるには十分な一冊であるように思います。