元厚生官僚にして各種審議会委員を永らく歴任してきた社会保障研究の第一人者による、自身の研究の集大成とも言える一冊。社会保障・社会福祉を専門にしているだけあって、取り扱う領域は介護、医療、年金、育児と幅広く、現在の社会保障の主要論点および政策課題をこれ一冊で網羅することができる。450ページにもわたる労作だが、参考文献等も詳細に示されており、学術的価値は高い。
しかし、本書の白眉は何といってもあとがき「私の社会保障研究30年」である。日々の研究スタイルや闘病生活などの描写もさることながら、著者自身の経歴(官庁〜官庁系シンクタンク〜学界)と、その時々の社会保障に関する研究・政策論争がオーバーラップして描かれている様は、さながら日本の社会保障研究史といった様相。著者は今年度末で定年を迎えるそうだが、本稿はまさに著者の最終講義といっても過言ではない。