大学出版会の書籍としては、異質な学術書でもなく学部教科書にも不向きと思われる権丈善一慶應大学教授の『再分配政策の政治経済学』シリーズ最新刊です。
紐付き付きの学者と財政学者の迷論、そして現場専門家の政策論形成不在の中、漂流し続けていた年金・医療・介護・教育・保育が、よいよ行き詰った小泉以後の時代に、「何も引かない、何も足さない」権丈再分配政策論が光を増している。
本書は、政府の審議会委員にハナカラ向かない若白髪とノーネクタイがトレードマークの権丈善一慶應大学教授が、社会保障国民会議に遊びに出かけた(委員になった)際の事務局の官僚、頓珍漢な報道を続ける新聞、論理的に破綻した年金論にすがる野党第一党、与党内の「上げ潮派」をいなしながら、官僚機構の有効利用としての年金シュミレーションを実行し、年金論争の参加ハードルを引き上げ、年金論争に形を与えた時期の同時進行論考です。
社会保障国民会議と同時進行で、資料を開示し、議事録を公開し、新聞報道を検証する。そして、HPとメールを上手に使い学生に実物教育を行う。その全てが、「遊び」であり、専門家・学者としての矜持であるような権丈善一慶應大学教授の生き方を反映しているようである。
年金・医療・介護・教育・保育の現場専門家が、本書を消化し各分野の政策論を組み立て、国民をいかに説得できるのか?今後の日本の姿が形作られる分岐点に登場した一冊として、多くの読者を獲得して欲しい。