20世紀末から21世紀初頭のリアリズムの巨星。
静物を中心とした、何気ないモチーフのデッサンが主だが
一枚一枚が、どれもシンプルな画面構成ながら
その非凡の筆致により、見る者を飽きさせず大変味わい深い。
布の柔らかさ、金属の反射、人肌の温かみ、葡萄の艶、
あらゆる質感を実体以上に描きわけ、描き尽くす、その妙技は
恐らく、風の無い湖面のように静かに澄みきった
達人の淀みなき精神性、集中力の表れなのだろう。
そのストイックなストロークのひとつひとつに
とっくりと目を凝らしてゆくうちに、自身の心もまた
心地良く静まってゆくのを感じる。
物たちの細部を観察し尽くす執拗な集中が、それらを
世界の全てを明鏡の如く明瞭に映し出すまでに磨きあげるのか。
その「物」らは、磨きあげられた作家の精神を、さらには
我々鑑賞者の心をも映しだす鏡そのものとなるのだろう。