判り難い建築書などではなく、小説として単純に面白いです。著者の前作「光の教会-安藤忠雄の建築」も読みましたが、今回も文体が明快で、ストーリー展開もスムーズ。最後までいっきに読み進むことができます。
物語のメインはやはり主人公・磯崎新と師匠・丹下健三の師弟対決。コンペという直接対峙することのない戦いですが、熾烈な格闘劇が描かれています。また磯崎新の弟子、事務所の所員たちの視点で描き出される磯崎新の素の姿も、変に面白く魅力的で読者を引き付けます。各登場人物ごとに書かれるサイドストーリーも豊富で、それが物語に厚みを持たせています。ひとつひとつの場面が映画のように視覚的に描かれていて、最後まで読者を飽きさせません。読み物として非常にオススメです。
もし、許可が得られるようであればコンペに提出した提案書の内容も添付してあると、読者にはうれしかったかもしれません。私は最後に別の書籍で確認しました。きれいな図面、精巧な模型写真、想いの溢れたテキスト等、すべてが物語とつながっていて感慨でした。提案書の内容は物語の核心部分ですから、オチが先に分かってしまう危険を伴いますが、見比べると非常に面白かったです。