全部で五編の歴史短編小説集です。 *-磔-*豊臣秀吉に命じられ、京・大坂で捕まったキリシタンと外国人修道士26人が、長崎までひったてられ磔刑になった実話。 どの作品もそうだが、吉村氏ならではの淡々とした、しかも細かい描写で綴られる。 彼ら26人は、絶えず祈りを捧げ続けるが、長崎の丘で磔刑に処せられた。 「磔」という刑罰でなく、「殉教」という言葉が胸に強く残った。 *-三色旗-*オランダ人商館長は、外出の許されていない出島で今日も祖国オランダからの船を待つ。実は、オランダはフランスの統治下にあって、オランダなど無いも等しい…。 が!!ある日、祖国の三色旗をはためかせた船が港に入ってきた!!艇を出し、その船に近づいてみると驚くべきことに…!! *-コロリ-*現代でも隔離治療が行われるコレラ。この話は、吉村氏の友人の祖父のことを書いたもので、彼は変わり者の医者で豪胆だったらしい。コロリが流行り、他の医者は及び腰なのに、彼は患者を診療した。が、「変わり者」が災いして、町人たちにコロリを広めていると誤解され、襲われることに…。 *-動く牙-*幕末…尊皇攘夷の頃、京に上り、心情を訴えたいと水戸の浪士群が動き出した。その数、千、二千…。京への途中にある藩は大慌て。だが、京の一橋慶喜(水戸)は、浪士群の追討に討伐軍を出すと決断。浪士群は軍議の末、降伏する。浪士群800余人は、にしん蔵に押し込められ、吟味の末、過酷な道が待っていた。 *-洋船建造-*ペリーの浦賀来航からしばらく、日露和親条約のため日本を訪れたプチャーチンは、折悪しく「安政の大地震(M8.4)」に遭い、船は壊れた。造船技術のある乗組員はいないが、船にあった別の設計図から、和船大工たちが、洋船を造船することに…。困難な作業の末、見事な洋船が完成。その後も船大工たちの活躍は続く。 短編ですが、読み応えのある5作です。