これまでも,確率論や確率過程論の本を何冊か手にとって,「使って」きました.知人の数学者から,「伊藤先生の本は,わかりやすいよ」と言われて,遅まきながら最初から酔狂に読み出したら・・・
確率論の面白さ,深さが,初めて理解できたという不思議な感覚にとらわれました.特に5章は圧巻の一言.
岩波の基礎数学のシリーズの分冊をまとめて単行本にしたもので,最初に出されてから年数が経っていて,今風の数学の教科書の書き方になれた目からは,若干の違和感もあるのですが,記述の素晴らしさに,とにかく圧倒されます.自分が理解していたことがいかに表面的だったかを,思い知らされました.
知人の数学者が言うような「わかりやすい」本とは思いませんが,教えてもらえる内容が半端ではないです.私には,奇跡の書物に思えました.登山のガイドを例にとっていえば,頂上まで最小の労力で登れるようなガイドをする,そんな教科書ではないです.山全体を理解し楽しませた上で,頂上まで連れていってくれる(ただし,余分な体力も必要)登山ガイド,そんな教科書です.
星6つを個人的につけたいです.