本巻では、焦点である豪州独立派の支援ルートを南周りにすべく、シドニー北方の壮絶な戦車戦からスタートします。
筆致は走っているのですが、マンネリの感は否めません。クルーセーダーを登場させたあたりにやや新鮮な感じはありますが、M4シャーマンが
登場するあたりはM3グラントを詳述するあたりで先が読めてしまい、興を殺がれます。あれほど戦車開発(製造技術)に苦労した日本で
安易に英国戦車が量産できてますし。
フィジー諸島経由の南周り補給ルートはやや新鮮な設定ながら、その迎撃海戦は都合よく日英合同部隊が勝ってしまう。兵器設定も無茶が多く、
九七式艦攻に「ブリストル・ハーキュリーズ」を積むのはいいけれど、英国でさえネイピア・セイバーで散々苦労したスリーブバルブエンジンが
日本で易々と量産できてしまったりする。フィジーにはレーダー装備夜戦の元祖、ハボックが書かれているのに肝心のところで出番がない。
そして、一見して脱力してしまうのは、P163の「彗星12型」。マーリンエンジンを積んだのなら機首の形状がスペイン製メッサーシュミット並に
変貌するはずなのに、ダイムラーベンツの側面吸気、倒立V12の排気管位置、機首上面の機首銃がそのまま。
巻頭の「フィンバック」(九七式四号鑑攻:ハーキュリーズ搭載)はキチンと描き分けられているのに、粗雑にすぎます。
(マーリンの日本での量産可能性にも大いに疑問ですが…)
巻末に巨艦モンタナ(未完に終わった計画鑑)が登場しますが、英国がサモア攻略を狙っている状況で「新たな戦場」というと、新鋭鑑を揃えて
トラック環礁襲撃しか考えられない。(空母戦力が激減し、日本の捷号作戦の米国版)、マーシャル沖海戦で水上砲戦、という史実の「日本戦略」を
再現する。そして、空母を失っていない日英は真珠湾奇襲。そんなストーリーと落し所が読めてしまう、そんな「勝せんかな」が見えた巻でした。