ラバウル攻防戦を米国側に物量消耗戦に持ち込まれ、中間基地からのエスコートファイター(P38)で苦戦する日英が、連携して複雑巧緻な大規模作戦で
一気逆転を計る。そんな『乾坤一擲』の作戦の1冊です。
とにかく作戦計画が大規模かつ多方面同時進行になるため、滅多矢鱈と忙しい場面展開になります。また、史実と架空戦記世界で、同一艦名で異なる
クラス・艦種がかなりあって混乱しやすいのですが、それなりのスピード感はあって、筆が走っている感覚は伝わります。面白さと言う点では圭作と
思います。
ただし、まずあれだけの複雑巧緻な作戦を、大した瑕疵なく実行できるものか否か。架空戦記はご都合主義、と言ってしまえばそれまでですが。壮大
なスケールのトリックに、上手く米軍が順々コロコロとハマってくれていくところには、ややヤリ過ぎ観は否めません。
オイオイ、と思いながら読めてしまうのが、今の筆者の筆力ではありましょうが。
それと、技術的な誤謬が細部ではかなりあります。まず、無雷跡の酸素魚雷を供与されたはずの英国が、何故か使用していない。
(ただコレは、短期間でモノにするには艦側に酸素設備が必要なので短期間には装備できなかった、という想定変更(鋼鉄の海嘯・末巻に対して)なの
であれば、逆に納得できますが)
もうひとつ、コレは致命的と思うのが、米戦艦に対してソードフィッシュが雷撃を敢行する場面。勇壮ではあるのですが、戦艦が斉射で殴り合いをして
いる最中に、対空機銃を使用する場面。普通に考えれば、主砲の射撃時にはノンシールドの40ミリ・28ミリ機銃は使えません。(爆風で射撃手が吹き飛ぶ)
細かいアラは散見されるし、読むのが多少忙しいですが、今巻は面白さ、爽快感で星4つ。ただし、『戦艦大和と言えど、巡洋艦の主砲塔を流用した
副砲は致命的な弱点』とハッキリ書いている半面、平行して書かれている『擾乱の海』シリーズの珍戦艦、アラバマはドウ収拾するのか。そこに次の
興味が行きます。
擾乱の海〈3〉ドゥリットル強襲 (歴史群像新書)擾乱の海〈4〉マリアナの暴風 (歴史群像新書)