私のローマ史の知識は(そして興味も)せいぜい高校生程度ですが、ラテン語への興味から本書にたどり着きました。小林標氏の教科書や『ラテン語の世界』に誘われて、碑文を読んでみたいと思いました。が、碑文には独特の表現、表記があって、文法書を学んだだけでは簡単に読めそうにありません。例えば S P Q R が「元老院およびローマ人民」を意味するくらいは教科書に書いてあるが、S P が sua pecunia の略で、「自らの資金で」を意味するとは教えてもらわねば分からないだろうと思います。この本は、碑文についての歴史研究上の重要性ばかりでなく、そうした碑文の読み方の実例をいくつも挙げてあり、参考になります。断片的な碑文から、いろいろな知識を使って全体を復元していく作業も、暗号解読のような面白さを感じました。
図版はたくさんあるのですが、イマイチ良く見えず残念です。ページ参照の誤りは私には見つかりませんが、図版を参照しているのか、解説を参照しているのかが分かりにくい場合がいくつかありました。しかし、ローマ史の専門家でなくても、ラテン語にそれほど詳しくなくても、楽しく読める本としておすすめです。