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破門の哲学―スピノザの生涯と思想
 
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破門の哲学―スピノザの生涯と思想 [単行本]

清水 礼子
5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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登録情報

  • 単行本: 301ページ
  • 出版社: みすず書房 (1978/01)
  • ISBN-10: 4622003937
  • ISBN-13: 978-4622003939
  • 発売日: 1978/01
  • 商品の寸法: 19 x 13.6 x 2.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.7  レビューをすべて見る (3件のカスタマーレビュー)
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22 人中、20人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 この本は,数年前私の大切な人から教えていただいた本です。そのころ私は,自分自身についてとても悩んでいました。そんな時,その人が直接著者から読むように薦められたという良書があると言いました。早速買って読みましたが,感動のあまり私はこの本の感想を論文にしてその人に渡しました。
 「破門の哲学」は,スピノザの哲学的生涯について書かれたものですが,私は,これは現代における「自己確立」の助けになる本と思いました。いかにして周囲のコムニカチオからの圧力を避け,自分自身という僅かな存在の中においても,いかにしてそこから生きている喜びを見つけ得るか・・・その高貴な精神と大いなるものへの憧憬が,この本には静かに書かれています。
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 日本には哲学研究者はいても哲学者はいないといわれますが、生きることと格闘しながら哲学するのであれば、それが先人の思想を研究することであっても、独自の思想形成であっても読むものの魂を揺さぶることが可能でしょう。そのすばらしい証明がこの本だと思います。
 この本は読み始めたらとまりません。たたみかける文章が、まさに苦悩するスピノザが目の前にいるかのように、読む者の背筋を揺さぶります。ユダヤ教会からの破門は、スピノザにとって世界から断ち切られたということと同義だったでしょう。その中で、幸福への一番の近道は何かを、切羽詰って追い求めざるを得なかった、その切実感が胸に迫ります。スピノザのおかれた状況とその思想を安易に今の社会状況に当てはめて考えるのもなんですが、世界から断ち切られた人たちは今の時代こそ、そこらじゅうにあふれているのではないでしょうか。
 もちろん著者はそのような問題意識から論じているのではありません。あとがきを読んでまた打ち震えました。著者はスピノザの「エチカ」のとてつもない冷たさから、逆に生身のスピノザを知りたくなったと言っています。300年以上の時を隔てて、冷たい幾何学的な哲学の陰に潜む人間としての叫びを地球の裏側の東洋人に理解されて、スピノザも幸せでしょう。そこら中にいる、スピノザのように世界から断ち切られた人々にも、いつか幸福への近道が見えることを願うばかりです。
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11 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
呪われてあれ 2008/5/18
現在の研究水準は不勉強にして知らないが、本書には人間実存の在り方と思想する・哲学する者の過酷さと厳しさ、そして生きることへの畏怖の念が溢れている。
スピノザを見よ!
彼は齢23歳にしてアムステルダムのユダヤ教会から破門される。その破門告知は次のように記している。
「我々はバルーフ・スピノザを破門し、追放し、弾劾し、呪詛するものなり。・・・昼も呪われてあれ、夜も呪われてあれ、また寝る時も呪われてあれ、起きる時も呪われてあれ、家を出る時も呪われてあれ、家に入る時も・・・」
この艱難辛苦が、彼の特異な倫理学、政治哲学を生み出したと佐々木力は『21世紀のマルクス主義』に書いているが、ユダヤ教会のスピノザ呪詛の文句を読んで中世スペインの作曲家ヴィクトリアが作曲した『聖週間の応唱集』を思い出した。
彼が詞として選んできたのは勿論「マタイ」や「ルカ」などといった聖書からであるが、そこでは執拗なまでにユダを攻め立てる言葉が並んでいる。攻め立てるなどというチョロイもんじゃない。正確には存在の否定、抹殺である。それはキリスト教としては当然なのかもしれない。何度も何度もユダに対し「生まれざりしならば良かりしものを」と繰り返す。『聖木曜日の応唱集』がそれだ。勿論この作品は「それ(ユダの裏切り)」を指摘するための作品である。しかし。しかし。ヴィクトリアの絶美のハーモニーで、繰り返し「生まれなければよかった」と歌われると本当に気分が滅入ってしまう。キリスト教は「愛」の宗教ではないのか?
これはキリスト教を解さないアジア人ならではの反応なのか。
スピノザはユダヤ教会から破門され、キリスト教社会からはユダヤ人として排除される。
思想の運命とは、しかし終局的にはこのスピノザの運命に比すべきものなのではないか。イエスの誅殺も構造としては同じではないのか。さらに、本当にイエスその人は、ユダに対して「お前は生まれなければよかったのに」などと言うだろうか?
それにしても、ユダヤ教会の文句は怖ろしい。呪われてあれ! 
翻って現代ニッポン。言葉にこそはどうあれ、同じような排除の構造がないものかどうか。
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