医療過誤の裁判の行方と,ペプチド療法と安楽死を軸とした高齢化社会対策の進行をテーマに下巻は進行する.
裁判でのやり取りにはリアリティがあるし,
高齢化社会対策を進めるためのキャンペーンなど,さもありなんという印象を受ける.
この辺は現場をよく知っている作者の本領発揮といったとことである.
とはいえ,医療過誤の方は決定的な証拠をつかむプロセスに目新しさはあるが,展開自体はやや拍子抜け.
当事者となった助教授が度々発していた思わせぶりな発言が伏線として十分に回収されていない印象を受ける.
また,良識派の医師として描かれていた麻酔科医の薬物中毒という問題が発覚するが,
作者が薬物中毒を生真面目さゆえの不幸と位置付けているような印象をも受けるのも納得しがたい.
このような実態が確かに一部にはあるのかもしれないが,
それを止むを得ないかのように描くのは逆に本物の麻酔科医に失礼ではないか.
それ以外にも,ジャーナリストの運命や,官僚が過去の事件との絡みで失脚する流れは,少々唐突で,展開としても安直に感じる.
ラストは墓参りで大団円を迎えるが,これだけの殺伐としたストーリーのエンディングとしてはなんだか予定調和的だ.
上巻でそれぞれが主張していた正義が,真っ向勝負することなく,結末を迎えているのが,物足りない.