まずジャケットから一見して「カッコイイ!」と感じずにはいられない。
5月の独自の事務所「ビートニク」設立、パーカッションが印象的なライブアルバム『
流民の歌(紙ジャケット仕様)』リリース、9月13日・伝説となった大阪・花園ラグビー場でのライブ、現・久美子夫人との恋愛など、1981年の総決算ともいえるこのオリジナルアルバムは、四半世紀経った今もなお僕の胸を焦がし続けている。
当時のFM音楽雑誌の記事によると、このアルバムにはタイトル曲だけでも120時間、アルバム全体では24曲の録音に1100時間をかけ、その中から9曲を厳選したものだと言う。
「パーカッションの洪水と飾りのない歌詞」にこだわったタイトル曲、小林旭の往年のヒット曲を独自の解釈でパワフルにした「ダイナマイトが150屯」、リズムに実験的要素を感じる「どっちみち俺のもの」、ザラザラした音が刺激的な「ランデブー」「ジャンキーズ・ロックンロール」など、アナログ盤でいうA面にはアップテンポ・ナンバーが並ぶ。
その他当初はこちらがシングルA面候補だった「陽の訪れのように」、レゲエ調の「奴(ギャンブラー)」、愛の幕切れを綴るラストナンバー「冷たい愛情」と一曲もハズレなしの力作だったが、それでも甲斐氏が満足していなかったのは翌年タイトル曲と「観覧車」(新録音)の2曲をNYパワーステーションの名エンジニア、ボブ・クリアマウンテン氏へりミックスを依頼したことからもうかがえる。
次回作『虜−TORIKO』で甲斐バンドのサウンドは洋楽とも勝負できるほど洗練されたのだがシンセサイザーが音の主体に移行し始めるので、“ギター中心のロックアルバム”というカテゴリーで語るのならこのアルバムがベストではないかと僕は思っている。
2011年6月追記:
その後も甲斐バンドは断続的に継続され、2009年12月に結成35周年として新録・リミックス作を多数収録した『
ロッカ・バラード』も発売したが、個人的にはこのアルバムを上記Bob Clearmountain氏によるリミックス、プロダクションノート、当時の未発表写真のお蔵出し、今作に関する甲斐よしひろインタビューを含む「30th Anniversary Edition」として再リリースしたほうがどんなに良いだろう。