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個人的におもしろかったと思うのは、作家の新作がオークションで高値をつけていくくだりです。エージェントが活躍して、完成前に出版社が多額のアドバンスを支払ったりするのは、小説も映画などでもアメリカでは日常的ですが、そのへんの話がおもしろかったです。
全体としては上手にまとまっていて、さすが文章教室やら作家になるための本などを出してるローレンス・ブロックらしく、小説のセオリーをはずさずに書けてるので損はありません。でも登場するのが金銭的には成功してる人たちばかりで陰鬱なのも皮肉なのかなぁと。私もブロックファンとしては、やっぱり暗いといわれようとも読後に哀しくなるにせよ、スカダーものの新作を待っている1人です。
しかし読後の今残った感想は、強いて言うなら、本書は『ロマンス』の部類に入るのではないかということだ。
出版社的には『サスペンス』とあるのだが、911のテロ、その1年後に突如起こる連続殺人を背景に、
本書でブロックは、自分自身にも向けて『生』、それも『力強い生』…生きる力を描こうとしたのではないだろうか。
と言いたいところなんですが、それは決して成功しているとは言えません。登場してくるニューヨーカーはさすがに流麗な筆捌きにかかると、ヴィヴィッドに描かれはするけれど、うまく描かれれば描かれるほど「だから何なの?」と思えてきちゃうんですよね。冗長でとりとめがなく、要点もぼやけている。そしてやたら長い。ひとつひとつのエピソードを短編にして、お洒落な雑誌に載せれば、ものすごく楽しめるモノになったのじゃないのかなーと思いました。
しかし!よーく考えてみると今までの彼の作品に「要点」なんてあったっけ?あの暗いスカダーものでさえ、彼の作品は「エンタテイメント」であったはず。その彼に「要点」を求めるほど、あるいはその彼があの「事件」を取り上げざるを得なかったほど、あの「事件」というのはとてつもなく大きな影を落としたんじゃないのかなーと思います。解説によれば本書は一気呵成に書き上げられたとか。そうまでして書きたかったのか、あるいはまとめ切れなかったのか。
僕は前者だと思いたい。だからもうすこし熟成させたこの「事件」に関する、彼の作品を読んでみたいのです。
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