邪馬台国論争については時期を追ってそれなりにフォローしてはいるが、今年6月に出たこのシンポの採録記録は、編集がフェアで、記述にバランス感覚が窺われ、面白く、かつ抵抗なく読むことが出来た。キャリア官僚ではないらしい文化庁調査官の司会と集約は、その意味でも出色といえそうだ。近畿説、九州説それぞれの先生方も、シンポの本番はともかく、加筆・修正の編集時点では冷静さを取り戻したようで、互いの立場を尊重した発言にトーンを落ち着かせているのが印象的だった。
シンポ会場に来た受講者の間では、九州説に賛同する人が半数を超えたらしく、一方で、考古学の研究者の間では畿内説が多数を占める、という構図は以前と変わらず。そんな、いつ果てるとも知れない所在地論争とは距離を置き、実直にマキムク遺跡を調査している奈良県桜井市の調査担当者の講演(182頁〜)には、えも言えぬ爽やかさが窺えて、もしかすると、全編のうちで最良の章かもしれない、と受け止めた。ともあれ、シンポの中にあった「所在地はどこだったかは不明、という中立的な立場はとらない方がいい。仮説を立て、そこを足場にして探求を続けていくべきだろう」という趣旨の発言には、思わずヒザを打った次第。