アマゾンのリコメンデーションを手繰っていくうちに見つけた本です。著者も著作も一切知らなかったのですが、他の方レビューに興味を惹かれたのと、古代イランに興味があるので購入しました。前編の「西の国の物語」を読んでいないので、筋についてのコメントは控えて、最も印象に残った2点をコメントしたいと思います。
ひとつめは表紙の絵と装丁。あくまで私の趣味ですが、薄紫色主調の微妙な色彩は、アマゾンの表紙写真にまったく出ていないのが残念です。他のサイトではもう少し実物に近いものがありましたが、それでも現物の良さが出ていないと思うのです。私は読みながら、途中何度も表紙に見入ってしまいました。恐らく読んでいる時間よりも長く表紙に見入っていたように思います。表紙が気に入ったのでしばらく本棚に飾っておくつもり。本書に関心を持たれた方は、是非本屋さんで現物の表紙を見てみてください。ひとそれぞれではありますが、微妙な色調を気に入る方もおられるのではないでしょうか。
2つ目は、イスラーム色がほぼ無いこと。ペルシア神話を扱った漫画は他に無いように思いますので比較はできないのですが、イスラーム以前のイランが登場する作品は若干あり、それら作品は、かなりアラビアンナイトな感じなのが残念に思っていました。史料が殆ど残っていないので仕方が無いとは思うのですが、本作は一味違いました。本作でイスラームっぽく感じたのは(気づいた限りでは)3コマだけ。かなり強く意識していないと、イスラーム時代のミニアチュールのついたペルシア神話の写本の挿絵とかに思わず知らず影響され、どこかアラビアンナイトっぽくなってしまうように思うのです(岩波文庫「
王書―古代ペルシャの神話・伝説」の表紙もイスラーム時代の挿絵)。ペルシア神話のひとつの典型というべき「王書」は、極力イスラーム・アラブ色を廃して、アラブ征服以前の古代イランに思いを馳せて製作された書物。ということで、本作の題材は、イスラーム色に流されず、しかもイスラーム以前のペルシア神話を描いた壁画などがほぼ残っていないということで、作家としての想像力及び”ペルシア神話”を描くことへの確固たる意思を要するチャレンジャブルな題材だと思うのです。イスラームっぽくないペルシア神話作品を読むことが出来て嬉しく思いました。