出世を諦めて地域限定勤務を選んだ主人公の幹郎だが,不況の中で次第に追い詰められ,しかも,会社に対して有効な対応策をとることもできない。一歩一歩悪くなっていく状況は,自分がそんな目にあったらどうだろうかと胃が痛くなるような思いで読まされた。
篠田節子は,「女たちのジハード」以来,大好きな作家の一人である。
幹郎の情けなさは,「ゴサインタン」の主人公を思い出させられたが,篠田節子は,こういう情けない男を描写するのが本当にうまいと思う。また,出稼ぎや村八分など田舎の社会問題もリアルに描写されていた。
ただ,本書のストーリー展開は,偶然に頼りすぎていないだろうか。娘がその死に関わった浮浪者が,実は両親にとって親しい間柄の男だったとか,墓参に行ってその親族に偶然出会い,話を聞けたとか。
グイグイと一気に読ませる力技は健在ではあるが,ストーリー展開を偶然に頼りすぎているのではないかと気になってしまった点を考慮して,星4つにした。