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砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫)
 
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砂の本 (ラテンアメリカの文学) (集英社文庫) [文庫]

ホルへ・ルイス・ボルヘス , 篠田 一士
5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

出版社/著者からの内容紹介

これは真実だと主張するのが、いまや、あらゆる架空の物語の慣例である。しかしながら、私の話は、本当に本当なのである…表題作等、変幻自在な生の諸相を幻想の世界に写しだした、粒よりの短編集。
--このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

内容(「BOOK」データベースより)

ある日、ひとりの男がわたしの家を訪れた。聖書売りだという男はわたしに一冊の本を差し出す。ひとたびページを開けば同じページに戻ることは二度とない、本からページが湧き出しているかのような、それは無限の本だった…。表題作「砂の本」をはじめとする十三話。また、独自の解釈に基づき、世界各国の歴史上の悪役の一生の盛衰を綴った「汚辱の世界史」ほか、短篇を収録する。

登録情報

  • 文庫: 288ページ
  • 出版社: 集英社; 改訂新版 (2011/6/28)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4087606244
  • ISBN-13: 978-4087606249
  • 発売日: 2011/6/28
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.8 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.6  レビューをすべて見る (8件のカスタマーレビュー)
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離れ業 2009/7/22
形式:文庫
 おそろしく難解ということでこれまで辞典もの(『幻獣辞典』『怪奇譚集』)しか読んでいなかったボルヘス。直前に読んだ詩集『闇を讃えて』に違った手応えを感じたので、たまたま売っていた本書を手に取った。

 面白い。マルケスが『物語』の書き手であるならば、ボルヘスは『言語』の書き手というべきところか。特に「会議」「ウンドル」「鏡と仮面」「砂の本」など、わずか20ページ足らずの短編なのに長編並みの濃度を感じる。圧倒される。

 前衛的なのに古典的という離れ業をやってのける作家はおそらくボルヘスしかいないのでは、と思えてくる。まるでボルヘス自身が膨大な図書館のようだ。
このレビューは参考になりましたか?
28 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 短編と言えば私には即座にこの「砂の本」の名が浮かぶ。このボルヘスが自分と出会うという不思議な話から始まる。それぞれの物語が共鳴し、ボルヘスの筆で落ち着く。あるはずのないものがある。無限という名の螺旋。はじめもなければ終わりもない、「砂の本」。これが最後に出てくる。まるで憑かれたかの如く、本に執着するわたし。それこそが本の持つ魔力だ。数え切れぬ程の本の中で時にそうした幸運に巡り合う。この主人公はそれを隠したが、私ならきっと人嫌いになっても読み続けただろう。その他、収録されている汚辱の世界史には日本ではお馴染の大石内蔵助、吉良上野介らの物語、そう、「忠臣蔵」も載っています。それは時空を超えて語り合う者たちの声、そしてそれを受け継ぐ私達の声でもあります。語り継がれる物語、つまり、作者が死してもなお続いてゆくという意味では砂の本の主題に沿う。終わりがなく、それは私達の中でも絶えず螺旋してゆく。きっと次の世代にも。こうして私達は本を受け継いできたのだから。「砂の本」、これぞボルヘスの道。目がほとんど見えなくなったボルヘスが口述によって完成させた「砂の本」は私にとって短編小説の最高峰とも言える本です。
このレビューは参考になりましたか?
8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:文庫
 この本に収められているボルヘスの短篇集は、そのラスト二、三行を書き写したくなる名文だ。訳文の、そのところどころは七五調、――日本の伝統的な、美しい調べですね、――でなされており、読んでいて心地よかった。簡潔な文体と、摩訶不思議な物語とのギャップのハーモニーが、この短篇集の魅力だろう。
 「お預けをくった魔術師」は、芥川龍之介の短篇小説「魔術」に非常によく似た作品だ。アラビアの説話からの翻案だそうである。私の記憶が確かなら、芥川は谷崎の作品を踏まえて、「魔術」を創作したという。その谷崎は、何かの作品中で、「千夜一夜物語」を読む男を登場させていた。作中に登場させるくらいであるから、谷崎も「千夜一夜」に通じていたのではないのか。「千夜一夜」はアラビアの説話である。芥川もまた、アラビアの説話を採集し、これを翻案し、「魔術」を創作したのかもしれない。
 「砂の本」。結末の違う映画は存在しないものか、と思っていた。先に映画を観た人が、まだ、観ていない人に、その結末をばらしていしまい、映画の楽しみを奪ってしまう、そんなことが起こらないためには、その結末が、毎回、毎回、違うものにすればいいのだ、そんなことを考えていたのである。なあんだ、と私は思った。ボルヘスは、すでにそういう試みを、小説という形式において、すでに実現させていたのである。もう二度と、見ることはできない世界、今、目の前にある、そして、今、この瞬間も過ぎていく、時が作り出す世界、つまりは〈現実〉の似姿を見事に切り取り、作品に貼り付けた。「砂の本」は、そんな作品である。
 彼は昔の彼ならず。本が時ごとに姿を変えるならば、人である私もまた、時ごとに姿を変えなければなるまい。――これは、私の、ささやかな夢である。
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