子供時代を主にして、戦前〜戦後の作者の体験を綴った本。ワルシャワゲットーでの母と弟と3人の暮らしや周囲の人々の様子、絶滅収容所への移送が始まって以降の弟と2人での隠れ場所での過ごし方等、すべて子供の頃のままの視点・思考で回想されている。ゲットー崩壊寸前まで移送を逃れていたことからしても、幼年期の作者一家はかなりの富裕層に属していたことがわかるが、それでも幼い作者兄弟にとっては苛酷で生涯心に傷が刻み込まれる生活環境であったことがわかる。終始、悲惨な現実を「冒険をしている夢」と思い込み、作者自身を「必ずハッピーエンドに終わる物語の主人公」と思い込んで過ごす作者だが、多くの殺された子供たちもまた同様の想像をしながら僅かな希望にすがりながら死んでいったのではないかと思うと、痛烈に胸が痛んだ。作者はまた、「大人としては自分の過ごしてきた過去を思い出せない」と言っている。大人の目でホロコースト時代を思い出したり喋ったりすることは作者にとってとても危険で、もしそんなことをしたら二度と底なしの沼から這い上がれないだろうと。それほど苛酷で悲惨な思いをしてきたのだということが、この言葉だけを読んでも強く伝わってくる。