何処にも繋がれず、ふわふわと空間内を漂う、
高さ14メートル、幅13メートル、奥行き7メートルの、
アルミ製巨大構造物<四角いふうせん>。
それはこの本の著者・石上純也のアイディアによる作品の一つ。
<四角いふうせん>は重さ1トンにもなる巨大なアルミの箱が、
ヘリウムを封入され、風船と同じ原理で空中に浮遊しているという、
写真や動画を見ても信じられないぐらいの衝撃を覚える作品である。
これを含め、大学キャンパス再開発に伴う工房の設計、
既存のビルの中に花畑を作る、草原の中のカフェ等、
実現したものやスタディの派生を含むプロジェクトを約500の小さな図版と、
約150の小さな文字のかたまり(和英文による相互訳有り)に分けて紹介しているのがこの本だ。
石上の狙いは、
互いに関係が無いように見えるプロジェクト同士の関係性を注意深く探し、
プロジェクト同士の境界を曖昧なものにし、
やがて生まれる抽象的な全体像から新しい建築の可能性を模索する、
というものらしい。
でもそんな筆者の狙いなんて露知らず、
簡単に言ってしまえば、絵が沢山あってとてもキレイ、というのが率直な感想だった。
そしてそれに加えて石上の携わったプロジェクトがどれもとても魅力的に感じられた。
何も考えずに設計すれば自重で天板がたわむほど大きなテーブル、
既存のマンションの屋上にピロティを持ったペントハウスを作る等。
そのほぼ全てに詳しい解説やコンセプトへの言及があった。
例として挙げた<四角いふうせん>にしても、
詳細な設計図やスタディモデルによる実験の記録など、
計算と実験によって展示物としての安全性確保にも努めた軌跡が残されている。
ただ眺めるだけでも現実的でありながら幻想的な現代建築家の世界を垣間見る事ができる一冊。