本書は、長らく電気工として働いていた時期にアスベスト禍に遭い、それが原因で胸膜炎を患った体験を持つ文学作家が、自らが見た現場と、取材で得た被害者らの実情とを綴ったもの。日本の経済成長にとって有用であったがゆえに、危険性の広報や使用現場での管理がないがしろにされてきた実態を併せて告発し、それは国策の名の下に行われた“人体実験”だったのではないかと怒りの声を上げる。
アスベストを大量に使用する現場は、こうした問題が発覚する以前から作業員の間で“ヤバイ現場”と呼ばれていたと言う。著者曰く、そうした現場で汗を流す職人たちは「言葉で表現することが苦手な人々」であった。本人の意思とは無関係に危険な仕事に従事させられることになった人々の実態について、誰かが書かねばならないという思いに至ったと胸の内を明かす。
(日経ビジネス 2007/04/30 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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5つ星のうち 5.0
あえてドキュメンタリーとはいいたくない。,
By sonojordan (長野県飯田市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 石の肺 アスベスト禍を追う (単行本)
小説家が書いた初めてのノンフィクションが自らのアスベスト被害体験。アスベスト被害者を救済する病院の医師、そしてそれに従事する労働者への取材。あえてドキュメンタリーとは言いたくない。事実を事実として捉え、脚色を完全排除した展開がより被害の怖さを物語っている。ハリウッド映画俳優のスティーブ・マックイーンはアスベスト被害で死亡したということだ。 知らされていない真実が多いことは被害も多いという事か・・・
1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
重たい問い,
By ゴンタ (大阪府) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 石の肺 アスベスト禍を追う (単行本)
当事者としての自身の体験と現状についての眼差しが交錯した重い本。ニュースでしかアスベスト被害を知らない人(自分を含む)で、その実態と問題についてきちんと理解しようとするためには必読。
5つ星のうち 4.0
肺癌は実はアスベスト過かも、危険はどこにでも,
By 鷺坂判内 "まさぞう" (神奈川県) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 石の肺 アスベスト禍を追う (単行本)
アスベストに関しては、対策が取られていると思っていた。仕事でアスベストに関係のある私でさえ。近所に工場もないし、学校のアスベスト除去も行われているし。ところが。消防の指導で(どういう法律に基づく勧告だったのか、知りたいが)アスベストを吹き付けることが義務とされ、今も多くの(殆どに近い)ビルの天井裏にはアスベストがあり、鉄骨にも吹き付けられた。それを修理する、立て替える、となると飛散の可能性は高い。また、アスベストは剥落するため、天井の換気から微量ながらも常に吹き出ている可能性も高い。これと喫煙が重なると肺癌のリスクが高まる。医師の経験不足から、多くの症例でアスベストが原因と診断されにくい。新事実として、大量に吸い込むと、比較的短期間でもいろいろな症状が発症する可能性がある。本書によれば、リスクは全国民的であり、クボタの工場の近くの住民だけではない。恐ろしい。行政の不作為(どころか指導もあった)による国民的健康被害の可能性という意味で、アスベスト禍は将来相当な規模で発生すると予想され、今からでもこれ以上の被害の拡散を防ぐ対策を取る必要がある、と読後思った。
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