2002年に出た単行本の文庫化。
この人の作品はユーモア・ミステリしか読んだことがなかった。本書を読んでびっくり。こんなに真っ当な「実験小説」を書く人だったとは。
本書のテーマは「音」である。ちょっとした事故で聴覚が鋭敏になってしまった主人公。ただ耳がいいというだけではなく、場所やものに蓄積された「過去の音」をも捉えることが出来るようになったという、驚きの設定である。
そして、彼の耳(や目)に響いてくる音の世界の不思議さといったら! 文章、比喩表現、展開に工夫があり、めくるめくような「音」に圧倒される一冊であった。
ひたすらそこを味わいながら読むべき小説。異様な読書体験となること間違いない。
残念ながら、ミステリとしてはまったく評価できない。