文章技術についての本なのだが、そもそも著者の文章自体に感心できない。
冒頭、著者が読み手の関心を引く書き方だとする「あなたは〜知っていますか?」という書き出しに続き、ビクトル・ユーゴーと編集者の「?」「!」という有名なやりとりのエピソードが紹介される。だが、こうした持って回った表現で世間に広く知られた話を説明するというのは結構恥ずかしいものがある。この「あなたは」「あなたが」が全編やたらに出て来るのも鬱陶しい。
また、本書の競合となる類書について「このような文章術はあなたのビジネスには役に立たない。なぜなら現場経験に裏打ちされていないから」と切って捨て、「その代わり様々な状況で圧倒的な効果を出してきた(著者の)短文力のテクニック」を身につけろという。だが、どうして十把一絡げにそう断定できるのか、なぜ著者の短文力の方が優れているのか、その理由は全然明確ではない。本書を持ってレジに、というお決まりのまとめ方もイージーで感じのいいものではなく、この「はじめに」の時点で読む気が70%くらい萎えた。
中身は基本的な文章術にごく当たり前の理由付けがなされている。それは参考になる人もいるだろう。ただ、短文力という割に著者の文章はだらだら続くものが多い。
例:「短い文章なんだから1回にもっといろんな観点で確認できるし、そうしたほうが効果的だと思うかもしれません。しかしながら、短い文章であっても自分で思っているよりも人は同時に複数のことができないものです。まどろっこしく思うかもしれませんが、校正する観点を1つ決めそれにしたがって全体を見直していくやり方のほうが、結局は短時間で終了するのです」。
これが短文力を説明する文章である。
また、お薦めの文例にも首を傾げた。
最たるものはメールの例:「先日ごあいさつさせていただきまして誠にありがとうございました。情報交換を兼ねてごあいさつに伺いたいのですが、来週水曜日の午後、木曜の午前のどちらかで、1時間ほどご都合のよろしい日時をお知らせいただけますでしょうか?」(助詞、句読点、漢字、ひらがな、すべて原文ママ)。
このようなメールを送りつけてくる相手に、私なら絶対に会おうとは思わない。
著者はプレゼンマスターという職業だそうだが、全体に短絡的で稚拙な印象の本だった。