近年、日本でもサルトルの再評価が進んでいる。若手思想史家による本書は、アナーキズムの観点から、サルトルの思想を読み直したもので、サルトルについて不案内な読者にも解り易いかたちで、彼の思想の現代性を伝えてくれる。レヴィ=ストロースとの論争に敗れた「歴史主義者サルトル」という、私も曖昧に共有していた「誤読」を指摘した部分は、特に教えられるところが多かった。
ただ、通読中、研究をはやくまとめすぎたような、論述の粗さを本書全体に感じた。サルトルの文章の引用には重複が目立つし、歴史的背景の説明部分は、平板であるだけに、サルトルの思想の解説部分とうまく接合できていない。著者の試みが新鮮であるだけに残念なところである。