私はクリスチャンであるが、諸事情あって、仏典を紐解くことになった。原始仏典と、大乗仏典一種類。結果として、仏教に帰依するのではなしに、寧ろクリスチャンとしての信仰が深まった。
それはそれとして、博学な方でも、大乗仏典を全て読むところまでは、なかなか行かないであろう。各宗派で重きを置いている大乗仏典を読むだけでも、かなり熱心な方なのではないだろうか。
この本は、あらゆる仏教入門書の中で、最も疲れを覚えないし、最も中立的に書かれている書物だと思う。
強引にでも仏教に帰依させようという意図もない。仏教には全知全能の神が存在しないだけでなく、この世の全ての現象には実体がないと説き、さらには、お釈迦様の言葉でさえ疑ってかかるべき、とまで歯に衣を着せず述べている。
また、それぞれの大乗仏教の宗派がどのような特徴を持っているのかを、わかりやすく述べている。どの宗派が特に正しいなどとも述べてはいない。
仏教徒として知識を深めたい人には物足りないかもしれないが、仏教に帰依するつもりはなくても、常識や教養として仏教を知っておく必要がある方々にとっても、おすすめの一冊であると思う。
ただ、大乗仏典で「如是我聞」の一文を枕詞の如く入れていて、仏陀の言葉でなくても後の僧侶達の瞑想の結果や意図的加筆さえも入っているという文献学的問題や、大乗非仏説の問題などについては、触れられていない。これらの問題については、『
法華経入門 (岩波新書)』 『
お坊さんが困る仏教の話 (新潮新書) 』などが役に立った。
その他、日本で習慣的に行われているお盆や葬式などについても、必要最低限の知識は網羅されている。
他の入門書がゴチャゴチャしていて読みづらい構成だっただけに、入門書としてはこの書が白眉であると言ってよい。