人間の知覚とくに視覚が,いかに真実と異なることを認識しているかについての最近の研究を紹介する30編の短編より成る.毎回の読みきりであるため,同じ話の重複が目立つ.実際全く同じイラストが何度も収録されているのは,もう少し工夫できなかったのかと思う.
われわれは,現場で得られる雑多な情報から自分にとって大事な情報を選び出し,現実に何が起こっているかを出来るだけすばやく判断する能力を,進化の過程において獲得してきた.つまり,感覚器官によって得られた情報を分析し再構成した結果を,われわれは知覚として認識しているのである.人間は,ひとに錯覚を起こさせて喜んでいる脳科学研究者や,人の目をうまくごまかしすのを職業としているマジシャンや自称超能力者が出現する以前に進化した動物なので,通常では滅多にありえない状況に遭遇すると,事実に反することを知覚してしまうのである.自分ではそれが真実ではないことを意識いていても,錯覚が起こってしまうのを押さえることができない,この不思議を本書でじっくり堪能してほしい.