様々な情報が物凄い速度で生み出されている状況に振り回されないために、特定の専門分野で10年程度かけて磨かれる「熟練した心」で、深い心を活用すること。
様々な専門分野が細分化されていく状況において全体像を見失わないために、自分が身を置く分野を超えた知見を積極的に受け入れることで磨かれる「統合する心」で、広い心を活用すること。
より複雑化する世の中で既存の知見を超えた解決策を見出すために、確立された分野からリスクをとって離れることで磨かれる「創造する心」で、新たな心を活用すること。
より多様な個人・文化・社会が日常的に接触する状況において対立を避け、上手く多様性を活用するために、他者を積極的に受け入れることで磨かれる「尊敬する心」で、違いを生かす心を活用すること。
日々新たに生み出される情報・知識を人類・生命にとって正しい形で活用するために、より高い志を持つことで磨かれる「倫理的な心」で、心を意味あることに活用すること。
本書では、これからの世の中の動向を踏まえたうえで必要とされる要素、またこれからの世の中をより適切な方向に進めるために必要とされる要素、について、上記5つの要素を「心(mind)」として整理しています。
ガードナーらしく、自身が身を置く心理学・教育学だけでなく接点となる様々な領域まで視野を広げながら、また理屈だけでなく様々な人物に話を聴くことから、この5つを抽出しています。
またガードナーが提唱した「MI(多重知能・マルチ能力)」との違いも軽めではありますが述べており、彼としては「知能」と「心」を分けているようです。
本書を読む限りにおいては、彼のいう「心」は、気持ち・姿勢・思考を指しているようです。そして「知能」が物事を上手く進めるための道具であるのに対して、「心」は物事を達成するための「知能」の使い方だと受け取ることができそうです。
ただ「知能」も「心」もガードナー自身が提唱しているだけに、これらについて彼自身の捉え方で構わないので、もっと整理されていると、より理解が進むだけに少し残念です。
また最近の脳科学・神経科学の発展で得られた知見をもっと取り込んでいれば
(例えば、感情・思考・知能・知識の違いなど)、この分野の更なる発展の礎になりえると思われるだけに、これも残念です。
あと本書の帯広告に「思考停止に陥った現代社会を救うのは五つのマインドセットを持ったリーダーだ!」と謳っていますが、ガードナーは本書の対象をリーダーに限定しているわけではありません。これは読者をミスリードするのでやめてもらいたいと思います。
一方で同じ出版社で出されていた前著「リーダーなら、人の心を変えなさい」では、読者のニーズを無視して参考文献を削除していましたが、本書では参考文献が記述されていました。本来、参考文献を掲載することは当たり前のことなのですが、改善が見られたこと自体は望ましいと思います。