全体の印象はラテンアメリカ向け投資を呼び込むための企業パンフレットを分厚くしてハードカバーにしたもの、という感じです。またパンフレットとしても情報が古い印象があり、冒頭の第1章のタイトルが「資源価格高騰で成長する経済圏」と言うのは2008年10月初版の本としては時期をはずし気味の印象です。
内容は1章から終章までの6章構成ですが、基本的にどの章も以下の内容の組み合わせです。
a.ブラジル・チリ・アルゼンチン・メキシコが地下資源と食料資源が豊富で、世界の輸出額に占めるシェアが高いことをアピール。
b.近年の政治改革で経済成長率が高まっている事を指摘。
c.投資に成功した企業の体験談、及び前向きに投資を考えている企業担当者のコメントを掲載。
d.上記を踏まえたうえでのラテンアメリカ諸国バラ色の未来図。
最初から最後までほとんど同じ調子でラテンアメリカ諸国の将来性を持ち上げるばかりで価格とページ数のわりに内容は非常に薄いです。節の見出しや文章も通俗的な煽り文句が多く、投資会社のパンフレットの印象に近いものがあります。
(「今、ブラジルが熱い!」「まだまだこれから、ラテンアメリカのデッカイ潜在力!」など)
またラテンアメリカ諸国の記述として違和感のある内容が多いのも気になります。第1章では選択クイズ形式で日本人が抱くラテンアメリカのステレオタイプを否定する箇所があります。「メキシコシティに地下鉄はある?」「ラテンアメリカの人が今欲しい三種の神器は?」「ラテンアメリカの人種構成は?」など。これらの設問で「メキシコシティには地下鉄がたくさん走っている」「ラテンアメリカで需要がある商品はノートパソコンやiPhoneである」、「先住民や黒人ばかりのイメージだが、実は白人が多数派」を指摘し、経済がいかに発達してるかがわかるという話に繋げるのですが、論拠と結論に無理のある物ばかりなうえに、(はっきりとは書いていませんが)白人が多数派であるのは素晴らしいことであるかのように読める構成は違和感を禁じえないものです。
政治に関する話も、各国とも数行で強力なリーダーシップと輸出好調により経済成長に成功。シカゴ学派の若手に思い切って任せたために成功。こう言った具合で非常に抽象的であり分量も少ないです。しかし政治動向が大きなリスク要因になる中南米諸国の市場について語る際に、各国の政府動向や政治情勢が殆ど触れられないというのは不可思議です。
主に扱っている国はメキシコ・ブラジル・チリ・アルゼンチンの四カ国なのですが、統計上のデータ以外に各国について語られる内容がほとんど同じである点も非常に気になります。
全体として著者がラテンアメリカ諸国について深い知識を有しているとは思えない内容となっており、ラテンアメリカ諸国の市場動向について価格に見合うだけの情報を本書から得るのは難しいかと思います。