本書は、Part1の「原子力の基礎知識」とPart2の「原子力発電のしくみ」で構成されている。
Part1では、原発のしくみの基本となる核分裂が理解できるように原子模型や原子核の基本から説明している。同位元素・半減期・放射線と放射能などをわかりやすく取り上げているため、親切な科学誌といった雰囲気だ。
Part2に進むと、さらに臨界や中性子の減速が説明されて、物理的な教養書でいいと感じた。しかし、110ページに始まる再処理や核燃料サイクルの説明辺りから、疑問が湧く。
110ページでは、六ヶ所村の再処理設備が“まもなく本格的に稼動することになる予定である。”とゴミの再利用が淡々と説明され、問題点などは提議されていない。
112ページでは、核燃料サイクルの説明で次のような記述がある。
“核燃料を増殖できればエネルギーを、1000年を超えるような長期にわたり供給できる可能性がある。”
問題点・危険性や海外での状況などには一切触れないで、悪魔のサイクルとも呼べる核燃料サイクルを肯定しているのは驚きだ。
126ページでは、プルサーマルも “現在最も有用なリサイクル法”と説明している。もんじゅのナトリウム漏れも事故としてあげてはいるが、“放射能漏洩は起こっていない”として146ページを締めくくっている。放射能漏洩は起こっていなくても、今後考えられる危険性について言及してほしい。
放射性廃棄物(核のゴミ)にしても 174ページでは“最終的には地殻が安定しているような土地で、深い地下に処分する。”と締めくくり、処分場の問題点すら、あげられていない。
最後に原子炉の解体として“作業員は放射線をあまり浴びることなく原子炉の解体を安全に行えるようになっている。”と説明している。商業用原子炉解体を実際に経験していない国で、あまりに簡単・安全に解体できるように受け取れる表現は如何なものか?安全性以外にコストも重大項目だと思うのだが一切言及されていない。
Par1が良心的な科学誌の雰囲気があるだけにPart2が残念である。問題点は安全神話のもと、蚊帳の外に置いた構成を貫いている。
いざ問題が起きた場合には、お決まりの「想定外」を出すのか?と言いたくなる。反原発の視点で読めば、それなりに得られるものがある。