ノーベル賞というと、受賞決定の日にマスコミが有力候補者のところで待ち構えていたり、受賞者にはインタビューの嵐となったりなど、特定の部分をメディアが集中豪雨的に報道するので何となくわかった感じがしています。でも、その周辺の事情については、意外に知らないものです。
本書は、「知っていそうで知らないノーベル賞の話」というタイトルどおり、読み進めながら、「なんとなく知ってるつもりだったが、そうだったのか」という感じがする本です。
著者は、商社マンとしてスウェーデンに駐在し、そのうちにノーベル賞やノーベルの人物・人生に興味を持ち、長年ライフワークとして調査を続けただけに、学術面だけでなく、私のような普通の人が知りたいノーベル賞の話をバランスよく記述しています。興味深く、楽しんで読める本です。
地味なテーマながら、このようになかなか読ませる本に仕上がっているのは、著者のノーベルに対する興味や深い敬愛が元になっているのではないでしょうか。
この本は、ノーベルの人生やダイナマイトの開発過程など技術史・産業史的な部分(第2章)、ノーベルの死後、困難な道のりを経てノーベル賞が成立したこと(第1章)のようにノーベル賞成立までの経緯が語られています。また、現在のノーベル賞で、候補者推薦から受賞に至るまでのプロセス(第4章)、賞金(第6章)のように、普通の人であれば誰もが知りたい情報に関しても記述されています。
そして、「経済学賞はノーベル賞ではない」(第3章)とか、「ノーベル賞を辞退した人、させられた人」「誤りであったとされる受賞」などのエピソード(第5章)のようなウンチク話や、さらにはノーベル賞と日本人(第7章)というふうに、極めて多面的にノーベル賞を記述しています。
「わずか約220ページの本で、これだけ内容があって、興味深い記述がよくできるなあ」と思えるほどです。なかなか興味深い、優れた本だと思います。