矢代秋雄は、日本の作曲家の中では、最も「民族性」を感じさせない、「近代的」で洗練されたスタイルを確立している部類の人物であろう。極めて綿密に曲がつくられており、吉田秀和がどこかで用いていた対比を用いれば、武満徹が「詩人」であるとすると、矢代秋雄は「職人」である。ここに集められた二曲は、「協奏曲」「交響曲」という伝統的なクラッシック音楽の形式と、緻密な管弦楽法を用いた、「職人的」作曲家の傑作である(といっても、この人に「傑作」以外には作品がないのだが)。しかし驚くべきなのは、そこにみずみずしい情熱や感情が豊かに盛り込まれているのである。日本の作曲家の水準は、世界的に見ても決して低くはないと思う。この二曲はそのことを実証しているが、なぜか日本人は自国の作曲家に冷ややかなのは残念である。
演奏もすばらしい。筆者はだいぶ前にN響で、ギーレンと中村紘子のコンビでピアノ協奏曲を生で聞いたことがあるが(マーラーの7番とのカップリングという興味深いプログラムだった)、その熱気あふれる演奏に鮮烈な印象を忘れてはいない。ここでの演奏は、精緻でしっかりとした構成観の中に、熱気も感じ取れる名演である。