2010年のアカデミー外国語映画部門受賞作品。深々と沈潜する思い、条理を超えたと感じられる至上の愛、この映画で描かれているのは、ある殺人事件を契機に湧き上がるどうにもできない男ふたりの25年にも及ぶ情炎の昂ぶりと決して変える事の出来ない愛する人への想いだ。
その事件は、幸せそのものの新婚夫婦の身に突然起こった。何者かに凌辱の上殺された新妻の凄惨な姿を見た主人公の刑事は、痛ましさと社会正義から犯人を追いつつ壁にぶち当たるが、被害者である夫のある行動に心打たれ、取り憑かれたように捜査を再開する。
“誰が彼女を殺ったのか?”、執念の捜査を主軸に物語は進むが、この映画の見所は、飽くまで、ミステリーのエッセンスを盛り込んだ“愛”のドラマ。最後に待っている事件の帰結は、受け止める側にとって賛否が分かれる処かも知れないが、このドラマの決着の付け方としては納得出来る。
そして、同時進行的に主人公に再び訪れるある人との25年ぶりの邂逅。
リカルド・ダリンがシブい。そのストイックさゆえか、その秘めた感情が正面切って描かれる事はないが、だからこそ、反ってその想いがひしひしと伝わってくるのだ。
そして、フェデリコ・フシドのテーマ曲の素晴らしさ!
「恋愛映画の傑作の陰に映画音楽あり」。美しくも内に秘めた激しさを感じさせる繊細でエモ―ショナルなそのスコアたちは、作品テーマと相俟って、心焦がされます。
他のレビュアー氏同様、映像テクニックの数々にもそそられるな。サッカー場でのチェイス・シーンでの、容疑者と思しき人物を追い続けるカメラの動きは、ちょっと凄いぞ。