著者の櫻井武・金沢大教授はかの天才研究者・柳沢正史テキサス大教授の後輩(ご両人ともに筑波大医卒)にして、テキサスの研究室にも一緒におられた事のある共同研究者でもある。
その柳沢教授とは、一般の方にも超有名な山中伸弥京大教授(iPS)と並んでノーベル医学生理学賞に最も近い日本人研究者と言われているお方である。
眠りには大きく別けて3つある。
1)リズムで眠る。(概日リズム・セロトニン/メラトニン系・体内時計)
2)疲れて眠る。(睡眠負債)
3)腹一杯で眠る。
この3番目の眠りに大いに関係する脳内ペプチド・オレキシンの発見(1998年)で世界的に有名なお方が櫻井教授なのである。
実はこのオレキシンの発見で停滞気味であった睡眠科学に大きな「ブレイクスルー」が訪れたのである。
そのオレキシンの発見に纏わるエピソードは第4章(99p〜)からじっくりと語り始められる。
オレキシンとナルコレプシーという奇病との関連についての物語はまるで小説を読むようで面白い。
そしてオレキシンという物質が明かした「覚醒」の意味とは(125p〜)。
それは従来の睡眠・覚醒という概念だけでなく、動物の行動や意識・悍状などをも包括する適切な覚醒状態を維持するための実に巧妙なシステムであった。
そして終章(219p〜)は「なぜ眠るのか---私の仮説」。
筆者はレム睡眠とノンレム睡眠を別けて鋭く考察する。
ここは読んでのお楽しみとしよう(笑)。
尚、オレキシン受容体拮抗物質は既にフェーズ3に入っており、著者は近々画期的な不眠症治療薬になるであろうと予言する。
この本は睡眠科学の最新の所を幅広く知る事が出来る良著である。
不眠症に悩む方だけでなく、一流の科学読み物としても皆様にお勧めする。