40歳でアスペルガー症候群と診断名がつけられるまで、つきあいの悪い子、おちつきのないおかしな行動をとるヤツ、と疎んじられ続けた著者。そんな彼が少年時代からの人生の道のりを綴った一冊です。
アスペルガーの世界では、本書でもその名が何度か触れられるテンプル・グランディンが有名でしょう。コロラド大学教授の彼女は、アスペルガーであるからこそ定型発達の私たちには見えないものが見えるその才能を生かして、動物行動学の世界で業績を残してきました。
本書の著者ジョン・エルダー・ロビンソンも、70年代にはロック・バンドKISSと行動をともにしながら火を吹くギターを彼らのために開発したり、初期のコンピュータゲーム開発に携わったりするなど、その卓抜した才覚をあらわします。
ですが、周囲の“普通の人々”には理解されず、遠ざけられる絶対的な孤独を味わいます。彼は必死で、普通の人々との対話のパターンを記憶・学習し、それを実践することで自分をなんとか周囲に溶け込ませようと涙ぐましい努力をしていくのです。
やがて結婚して子供をもうけ、著者は故郷に再び家を構えます。そしてかつての自分が全く味わうことができなかった、周囲の人々からの受容を経験するまでに至るのです。
巻末の「追記」で著者が綴る次の言葉は、アスペルガーや自閉症について正しい知識のない私のような読者には大変示唆的であり、胸を突かれる思いがします。
「僕たちの脳は生涯を通して発達し続けるというこの発見は僕にとって感動的だった。僕が頻繁に聞かされて、受け入れなかった台詞、『自閉症なら、きみはずっと変わらない』とは正反対だからである。」
この著者の言葉を読みながら自戒を込めて思うのは、知らない自分から、多少なりとも知る自分になる、ということ。
それが本書を読んだ一読者としての私の収穫だといえるかもしれません。