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「もの食う人々」は共同通信社在職中に書かれたものと聞くが、本作は社を辞め、文筆に専念してからの作品。筆致はもはやジャーナリストのそれではなく、完全に文学者のものになっている。永山則夫の死刑が執行された後の東京拘置所を訪れたある暑い夏の日の描写は、たとえば、こんなふうである。
「塀のこんなに近くにも、時計草や白粉花や立葵やカンナが咲き乱れて、烏揚羽は光に黒い粉をきらめかせ、亀は亀とて、生あくびをしながら甲羅干しだなんて。さなきだに、この狂おしいばかりの蝉時雨。」
好きな人にはたまらないのかも知れないが、「もの食う人々」でみせたジャーナリストとしての冷徹な事実描写が好きだっただけに、死刑廃止論や有事関連法批判までこの文体でやられるとちょっと調子が狂う。
時事評論はふつうにやってもらった方がよかった、とやや残念にも思うが、もっとも辺見はもともと報道ではなくて文学をやりたかったのかもしれない。
ともあれ、エッセイとしてはかなり重厚である。それなりに読み応えはあると思う。
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