現在、テレビドラマから火がついて「清張ブーム」が起こっているようだが、昭和30年代に初めて湧出した「清張ブーム」は今の比ではなかった。いわゆる本格的な「社会派推理もの」の登場! そのブームを起こしたふたつの長編が「点と線」であり、続く「眼の壁」であった。パクリ屋と呼ばれる犯罪者にだまされ、責めを負って自殺した上司から遺書として送られてきた書簡。それを手がかりに、義憤をおさえきれない主人公が、素人ながらも事件の本質をさぐり始める。おもに舞台は、岐阜県東部と長野県の木曾、ちょうど名古屋から走る中央線(鉄道)沿いの地方。パクリ屋、右翼、精神病院、政治家、いろんな絡みがあり、終末に至る描写は、まさに巻おくあたわざる面白さ。清張の最高傑作とはいえないけれども、清張作品を体験するに不可避の名作。