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10 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0
眩暈のリフレイン,
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レビュー対象商品: 眩暈 (講談社文庫) (文庫)
御手洗潔シリーズ673ページの長編。まず古井教授と御手洗との100ページを超える『奇妙な一文』への精神病理学的分析が出色のすばらしさだ。 脳・そして人間という生命体・薬・ウィルスといった目眩く医学的な世界からスタートして、御手洗の頭脳にはグローバルな視点での解釈が加わり、余りの見事な解釈に声も出ない。 一方、もうひとつ頭の中で重なったのは最近超人気作家になってしまった養老孟司氏の自宅訪問のテレビ番組だった。氏が大事そうに『小頭症』の子供のミイラを保管されているシーンが出てくる。氏の唯脳論を参考文献にあげていることからも、東大から御手洗を訪ねてくる古井教授のモデルは養老先生ではと思わせた。 プロットの素晴らしさと作者の社会問題への強い関心が見事に融合して文句なしの傑作になっている。また、文体も子供の文章を模した大きな平仮名や、リフレインし加筆される『奇怪な一文』など、極めて革新的な構成になっている。ただただ島田氏の才能に関心の一冊だ。必読!!
4 人中、3人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
レアリスムを瓦解させるレアリスム,
レビュー対象商品: 眩暈 (講談社文庫) (文庫)
眩暈に吐き気に奇妙な恍惚感。濃厚にして緊密な一冊だ。本書の発端となるのは『占星術殺人事件』を愛読する青年が書いた手記。そのなかでは太陽が消滅し人間が動物になり両性具有者が誕生する....そんな妄想キチガイとしか解釈できない手記をみた御手洗は こんなにもロジカルかつ現実的なものはないと豪語し解読してみせる。そこには奇怪な表層以上に異常な重層と驚きの深層が隠されていた。 メイントリックの魅力もさることながら,それを解き明かすことによって附随してくる御手洗節が最高ですね。それはとりもなおさず 島田荘司の社会的側面の強い教唆でもある。ただそれは安直に理想主義的と呼べるものではない。 現実主義を否定して理想主義を推し進めれば唯我独尊タイプになるのがオチだが,そうならないのが島田の凄さであって,すぐれた眼と知識で 現実を観察・分析・解剖・抽出して,それを奇想天外にも本格推理小説なる媒体に通してより現実的な教示を与えてくれる。 同時にシンプルに見ればそんなプロセスこそが御手洗潔の人格にも繋がっていることに気づけるのです。この二人といない魅力的な名探偵を 創造してくれた島田荘司の一種矛盾を抱える〈理想的情熱〉には頭が下がるおもい。
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0
手記「部分」はもはやひとつの極北,
By くろひょう (福岡県春日市) - レビューをすべて見る
レビュー対象商品: 眩暈 (講談社文庫) (文庫)
島田荘子の長編小説を読むたびに私の頭の中に常にひとつのイメージが喚起される。それは、荒涼たる賽の河原で作者がひとりぼっちで石を一つ一つ積み上げていく姿。 無論、大きな石から順に積んでいくとは限らない。時に小さな石の上にとんでもなく大きな石を平気で積み上げてしまう。そのアクロバチックな積み方の妙には大いなる驚異と大いなる危うさが全く等価に同居している。普通は驚異を強調し危うさは極力隠そうとするもの。だが、その両者を堂々とイコールとして読者に提示せしめる点が島田荘子の真骨頂だ。 そうやって完成された作品という名のオブジェは、凡庸な予定調和がもたらす安心感とは無縁の異形の論理の美が潜んでいる。 「眩暈」において、冒頭の異様なる手記を学者との対話の中で御手洗が合理的に現実のものとして解きほぐしていく部分。その石の積み上げ方は、古今東西を問わずもはやある種の極北に達している。私が読んだ島田作品の中では間違いなく最高の「部分」だ。 わざわざかっこ付きで部分を強調せねばならぬのは私も他の読者と同様だ。残念でもある。 だが、後半部分も含めて完成した「未完成品」を堪能できるのも島田ファンの醍醐味のひとつ。未読の人にはぜひ読んでもらいたい。
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