残念ながらテレビドラマでは見たことがないのだが、シナリオを読んだだけで、良く組み立てられているサスペンス、ミステリであることが分かる。
森の静謐さと禍々しい過去のコントラスト。途中から加速されていく物語の展開、錯綜する人間関係、どんでん返し・・・と、どれも魅力的で厭きさせることがない。さらに人気タレントが演じることで、本放送時の評判が高かったと聞くが、十分納得できる。
ストーリーもさることながら、巻末のプロデューサーや脚本家のドラマの制作手記も非常に興味深かった。そこでは1クール(3ヶ月)の作品を生みだす情熱と具体的な手法が述べられているからだ。「ドラマって、こう作られるのか」と感心した次第。(このあたりをさらに詳しく知りたい方は「野沢尚のミステリードラマは眠らない」野沢尚著、NHK出版で、詳述されています)
作者は脚本のみならず小説まで手を広げ、連続して佳作を送り出していた。本作品では「人生は童話じゃないんだ。自分が背負ってしまったものを、一生抱えて生きていくしかない」というセリフを書いた作者であるが、過去の実績の重みを抱えきれなかったのか、自ら命を絶ってしまったのは残念なことだ。