本書は今から7年ほど前に出された著作であるが、
各種史料を丁寧に分析をしながら、関ヶ原合戦が起こるまでのさまざまな事象について冷静な研究を行っており、
現在読んでもその研究成果は古さを感じさせることはない。
その内容は、
・「五大老五奉行制」の疑念
・石田・上杉連携による家康挟撃作戦の可能性
・直江状の真贋問題
・三成のたてた対家康戦略の詳細とその破綻について
・西進する徳川勢の軍団構成研究
・家康の想定していた西軍との決戦地点の分析
・西軍はなぜ関ヶ原に転進したのかについての推察
・「裏切り者」として名高い小早川秀秋の実状研究
・西軍の精鋭部隊とされた宇喜多秀家勢の現実
・島津義弘勢の合戦当日の行動の分析
など、我々が関ヶ原合戦を考察する上で当たり前のように語っていることから、
今なお議論が分かれるものについてまで、
幅広く改めて再研究を行ったものとなっており、非常に読み応えのあるものとなっている。
全体にどちらか一方の武将を褒めあげたり、逆に貶したりすることもない、
中立的な視線に立った冷静な分析内容であり、関ヶ原合戦の研究本としては好著の部類に入ると思う。
笠谷和比古氏、近衛龍春氏、三池純正氏、藤井尚夫氏らの関ヶ原合戦についての分析の好著同様、
関ヶ原合戦を知る上ではずすことのできない著作の一つと言っていいだろう。