鉄砲伝来とは、西洋との出会いというよりは、東アジアの海上貿易において倭寇が占める位置を明らかにしているイベントだということなのだが、著者はそれらを語るよりも鉄砲とそれに関わった人たちを描くことに関心があるようだ。
「百年通説の打破」という著者の気負いと実際のこの本自体には、かなりギャップがあると思う。タイトルと最初の部分の記述を読むと、本当のところ鉄砲の伝来はどうであったかを詳細に語るのかと思いきや、実際は最初にさらっと語るだけで、本の残りの大部分は鉄砲事情あれこれ、武芸としての砲術や砲術師や鉄砲鍛冶のことで占められている。正直のところ、タイトルは「戦国期から徳川初期におけるニッポン鉄砲事情」というのが正しいと思う。
本書で一番面白かったのは第八章の朝鮮出兵により朝鮮に降伏した日本人と鉄砲についての記述。司馬遼太郎氏が、加藤清正が朝鮮からつれてきた朝鮮人について書かれたのとは逆に、朝鮮側に降伏した倭人達について書かれた部分は初めて知った事で、へぇ〜と感心。