本書には戦前の探偵小説が5編収められているが、いずれもテイストは戦後のものと変わらないのが興味深かった。著者の場合、物語の結末があざやかなら名作で、その逆なら駄作と見てよく、どちらにせよ、主眼は結末よりもそこに至るまでのストーリー運びにあるように思う。つまり、読み手を夢中にさせようとするサービス精神がこの人のよさで、それは戦前も戦後も一貫しているということ。だから、それぞれの作品を読み終わって「すごかった」となるか「なんだかなあ」となるかは人によってちがうだろうが、結末までページを繰る手が止まらないというのは保証できる。
それにしても、金田一も好きだけど、由利先生もけっこういい味、出してるよ。自信満々でズバズバ推理を進めるところがたのもしいね。