売れない作家の真木栗が体感する「別世界」を我々も覗き込む・・・。単純に頭痛薬の飲みすぎなのか、本当にそこに「何か」いたのか。いずれにせよ時間軸もぶれた状況で物語は進んでいく。どこまでが現実でどこからが悪夢なのか。正直、深川監督がこういうシャシンを撮れるとは、ちょっと驚きだった。少なくとも真木栗とあの部屋で絡んで、現実世界にいたのは隣人役の北村有起哉と、編集者役の木下あゆ美だけだ。その両方を表現する西島秀俊は、今までにない「憑かれた」表情が素晴らしく、最後の「疲れ」メイクも必要なかったんじゃないかと思うほどの演技で魅せた。「幽霊?」役の粟田麗も、普段は小さな役が多いが、これだけ妖しく振舞えるのもびっくりした。木下あゆ美は本作が女優としての転機になるのでは。アイドルが映画に出る、という感じじゃなくて、しっかりと感情を出し切った芝居は一級の「女優」だった。メインのロケ地は鎌倉だ。これがまた素晴らしい雰囲気を醸し出している。高間賢治という名カメラマンを起用していることもあり、異空間への出入り口としての「鎌倉」はとっても妖しい魅力に満ちていた(アパートは浦安らしいが・・・)。メイキングを観ると、公開まで1年以上かかっていることがわかる(オールアップからの期間じゃなくて、完成後から)。やはり大手配給会社、TV局、代理店が介在しない作品は冷遇されるようだ。確かにその年の興行成績トップ10に入るようなシャシンではないが、下らないTVドラマの劇場版などかけているヒマがあったら(よい映画化もたくさんあるけど)、こういう中味で勝負できる作品を優先してほしい。星は4つ。