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真昼なのに昏い部屋
 
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真昼なのに昏い部屋 [単行本]

江國 香織
5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (18件のカスタマーレビュー)
価格: ¥ 1,470 通常配送無料 詳細
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商品の説明

内容説明

せめて、きちんとした不倫妻になろう。

満ち足りているはずの生活から、逃れようもなくどんどんと恋に落ちていく。
恋愛を、言葉の力ですべて白日の下にさらす、江國作品の新たなる挑戦!

私は転落したのかしら。でも、どこから?
会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、
家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。
大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、
二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。
時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、
ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた――。

恋愛のあらゆる局面を、かつてない文体で描きつくす意欲作!

内容(「BOOK」データベースより)

会社社長の夫・浩さんと、まるで軍艦のような広い家に暮らす美弥子さんは、家事もしっかりこなし、「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦。大学の先生でアメリカ人のジョーンズさんは、純粋な美弥子さんに心ひかれ、二人は一緒に近所のフィールドワークに出かけるようになる。時を忘れる楽しいおしゃべり、名残惜しい別れ際に始まり、ふと気がつくとジョーンズさんのことばかり考えている美弥子さんがいた―。

登録情報

  • 単行本: 210ページ
  • 出版社: 講談社 (2010/3/25)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4062161052
  • ISBN-13: 978-4062161053
  • 発売日: 2010/3/25
  • 商品の寸法: 19.2 x 13.2 x 2.6 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 3.8  レビューをすべて見る (18件のカスタマーレビュー)
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11 人中、9人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By Nutrocker トップ1000レビュアー
形式:単行本
恵まれた境遇にあるきちんとした奥様が日本通のアメリカ人に惹かれて……という
現実にも起こりそうな設定の物語。ふわふわと優しい描写のなかに、
江国さんらしい鋭い観察眼とアイロニーが光っています。

私が感心したのは、まず日本通のジョーンズさんの描写です。
基本的にマッチョを良しとする母国に疲れ、和の国日本に
憧れて英語教師として糊口をしのぐアメリカ人は珍しくありませんが、
その生態や周辺の人びとが実に巧みに描かれています。

ジョーンズさんに誘われるまま「世界の外」に出てしまった美弥子さん。
あまりにもナイーブ過ぎるといえばそれまでですが
ひとところに定住せず、ノマド的に自由に生きるアメリカ人と
大事に庇護されて育った日本の奥様との恋には
どんな未来が待っているのか、余韻を持たせた最後のページの描写は
残酷なおとぎ話の結末のようです。

巻末近くの「一人の女性が真理を発見するのに力を貸せたのは大いなる喜びですし、
たぶんこれで良かったのだとジョーンズさんは思いました」にどきりとする方は多いのではないでしょうか。
普通の日本人とアメリカ人を描いて、文化の違いをさらりと的確に示すあたり
江国さんは実に頭の良い女性だな、と思ってしまいました。
このレビューは参考になりましたか?
11 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
女性が不倫に陥るメカニズムを清々しく描いた作品ということでしょうか。心が揺れる美弥子さんは、夫の浩さんのことを好きだとまず考えます。だけどすぐに、「夫だから好きだというのはおかしい、好きだから妻と夫になったのに」と自己批判します。夫だからという義務感の方が、好きという感情よりも先にくるのはおかしいと思ったのでしょう。自分の感情に正直に生きようと決心した時、夫ではない素敵な(と思っている)男性がそばにいる人妻に、何が起きるか…。

「美弥子さんを驚かせたのは、一日に何度も性交するという事態そのものではなくて、朝から晩までそうせずにいられないという、ひさしく感じたことのなかった自分自身の欲望でした」と美弥子さんは欲望の女になります。自分の家が見知らぬ場所のように見えたり、夜なのに食事の準備もせずに、不倫相手のジョーンズさんと二人きりで寿司屋で寿司を食べたりと、突然世界がすっかり変わってしまいます。姑が感心するほど古風で一途だった美弥子さんのそんな変化について、ジョーンズさんは「美弥子さんは、ただ単に、真理を発見したのです」と言います。美弥子さんは、ただ単に、社会倫理のタガがはずれただけだと思うのですが。

ジョーンズさんは、人妻である美弥子さんの家に足繁く通い、美弥子さんと二人で近所をフィールドワークという名の散歩をし、一緒に銭湯にまで行きますが、当然のことながら、ご近所の目が光ります。でも、ジョーンズさんは全く気にしていません。後ろめたいことは何もしていないと、美弥子さんも気にしていません。それは少年と少女の無邪気な振る舞いですが、ジョーンズさんも美弥子さんも少年でも少女でもありません。大人になってからも幼い時に過ごしたように過ごすのは、おとぎ話のようで、誰もが憧れるでしょうが、それを実際にそのまま実行してしまえば、単なるわがままです。わがまま、不倫の特徴のひとつです。

「罪悪感というのは自意識にすぎないんです」と言うジョーンズさん。不倫を罪だと思わなければ罪悪感は抱きません。美弥子さんに罪悪感を持たれることは、ジョーンズさんには都合の悪いことです。美弥子さんにとってもそうでしょう。二人にとっては、罪悪感を抱くことなく性交する方が、都合がいいのです。人は誰も自分がしていることを美しく正当化するものですが、厄介なのは、この物語のように、単なる正当化を当事者が真理と思い込んでしまうことです。

「私、世界の外へでちゃったんだわ」と美弥子さんは思いますが、世界の外にでちゃたんじゃなくて、タガがはずれちゃっただけです。そして欲望に素直な自分を発見したということです。「あっというまに転落してしまった」と思う一方で、どこから転落したのか自問する美弥子さん。社会倫理のタガが外れてしまえば、善悪は存在しないのです。そんな自分には「性交は徹頭徹尾健全で、とても自然なこと」なのです。それを「世界の外」と思っていいものでしょうか。「世界の外」には自由の響きがあります。世界の内側よりもすばらしい世界という印象を持ちます。欲望に身をゆだねることは、自由になることではなく、欲望に縛られ不自由になることではないでしょうか。美弥子さんは、世界の外へ出たのではなく、自我の欲望に囚われてしまったと考えた方が正しい気がします。欲望が満たされている時は、欲望が大きければ大きいほど、生きているという実感も大きくなるのでしょうが、満たされなくなると、囚人のような絶望感に悩まされます。欲望が大きいほど、絶望感も大きくなるのです。欲望は生のエネルギーですが、制御が難しいのです。

姑と夫につくして家事をしっかりこなし「自分がきちんとしていると思えることが好き」な主婦だった美弥子さんは、そんな生活を価値ある生き方だと思っていました。でも、それは単に世の中のきまりを守っていただけだと気づいたのです。生活の安心はあるが、生き方として正しいのかと、ジョーンズさんの生き方を見て思います。足元が揺らぎ、既存の価値観が崩れ去ります。より良き社会人であっても、必ずしもより良き人間とはかぎらないと気づいたのでしょう。自分の生き方を自覚し、真実に目覚めるのは大切なことですが、それは欲望の虜になることではないはずです。欲望の虜になるということは、より良き社会人でさえないということです。

美弥子さんが家を出たのは、浩さんが嫉妬し、美弥子さんを侮辱したからでした。そのため、浩さんは家に戻ってきた美弥子さんを責めません。すると、今度は美弥子さんが「ひろちゃん、もう私に執着していないのね」と浩さんを責めます。浩さんは仲直りするための努力をしていたのです。ここには、浩さんに頭がおかしいと思わせるほど、徹底的に自分のことしか考えられなくなった美弥子さんがいます。自我の欲望に囚われた人の特徴です。かつての美弥子さんなら、浩さんのことを考えてあげたでしょう。ジョーンズさんも浩さんの気持ちを、全く考えていません。これも不倫の特徴のひとつでしょう。

事態が進み、美弥子さんとの肉体関係は続いていても、ふらりと寄っておしゃべりしたあの日々が二度と戻らないのを淋しく思っているジョーンズさんは「一人の女性が真理を発見するのに手を貸せたことは大いなる喜びですし、たぶんこれでよかったのだ」と自分をなぐさめます。ただ、そう思っているのはジョーンズさんだけではないでしょうか。一人の女性が、欲望に目覚めるのに手を貸したのを、自分に都合よく考えているとしか思えません。なぜなら、冷たいビールをごくごく飲みながら「奇妙で残念なことですが、美弥子さんはジョーンズさんの目に、もう小鳥のようには見えないのでした」とあるからです。男にはモノにした女がどう見えるか、自明です。真理を発見した女性は、小鳥か、それ以上に美しく輝かしい存在のはずです。ちなみに、冷たいビールをごくごく飲みながら、というところに江國香織さんのセンスを感じました。

ジョーンズさんが小鳥のようだと思って美弥子さんに魅かれたのは、美弥子さんが古風で家庭的で性の欲望から解放された少女のような人だったからではないでしょうか。ジョーンズさんには新鮮だったのでしょう。なにしろ、ジョーンズさんの回りは、妻ある岡田さんと不倫をしながらも、ジョーンズさんとも試しに「一枚の布団にくるまったこともある」ナタリーなど、ジョーンズさんも含め、誰もが自分の欲望に忠実な芸術家タイプの人たちばかりだからです。美弥子さんが欲望の人になれば、ジョーンズさんの目には、もう小鳥のように見えなくなるのは当然です。「青い鳥」は、自分のものになれば、ただの鳥なのです。

ジョーンズさんは美弥子さんが小鳥のように見えなくなったのを残念に思っていますが、その一方で、離婚の話し合いを進めている最中に、ジョーンズさんと「二度一緒に食事をしましたし、そのときには二度とも、食事以上に互いの身体を心ゆくまで味わいました」という美弥子さんは、ジョーンズさんのことをどう思っているのか知りたいところです。美弥子さんは、まだ、かつてのようにジョーンズさんといっしょにいると「何もかも単純にたのしく、輝かしく、自分がとても身軽に、いっそ子供になった」ように感じているのでしょうか。そのあたりの記述がないのが残念ですが、読んだ印象では、まだそう感じているか、それ以上に感じているのではないかという気がします。

この作品には、不倫を扱っていながら、愛という言葉が出てきません。通俗的な不倫物語にはしたくないからでしょうか。愛は真理以上に欲望と勘違いされる言葉ですが、この作品では真理が愛と同じ意味で使われています。江國香織さんは、ジョーンズさんの言うように、美弥子さんは真理(愛)を発見したと思っているのでしょうか、それとも、不倫に陥る多くの女性たちがそうであるように、真理(愛)を発見したと誤解している女性を描こうとしているのでしょうか、聞いていみたい気がします。読んだ印象では、後の方だと思いました。
このレビューは参考になりましたか?
3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
形式:単行本
「美弥子さん」「ジョーンズさん」という具合に『三人称"さん"付け』かつ、
ですます調のせいか、子供向け童話のような印象の物語。

不倫の物語ですがどろどろ感はなく、
かわいらしくさわやか。
(語り口調の効果が大きいかも)

つい苦笑いしてしまう、最後から2段落目が秀逸。
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