恵まれた境遇にあるきちんとした奥様が日本通のアメリカ人に惹かれて……という
現実にも起こりそうな設定の物語。ふわふわと優しい描写のなかに、
江国さんらしい鋭い観察眼とアイロニーが光っています。
私が感心したのは、まず日本通のジョーンズさんの描写です。
基本的にマッチョを良しとする母国に疲れ、和の国日本に
憧れて英語教師として糊口をしのぐアメリカ人は珍しくありませんが、
その生態や周辺の人びとが実に巧みに描かれています。
ジョーンズさんに誘われるまま「世界の外」に出てしまった美弥子さん。
あまりにもナイーブ過ぎるといえばそれまでですが
ひとところに定住せず、ノマド的に自由に生きるアメリカ人と
大事に庇護されて育った日本の奥様との恋には
どんな未来が待っているのか、余韻を持たせた最後のページの描写は
残酷なおとぎ話の結末のようです。
巻末近くの「一人の女性が真理を発見するのに力を貸せたのは大いなる喜びですし、
たぶんこれで良かったのだとジョーンズさんは思いました」にどきりとする方は多いのではないでしょうか。
普通の日本人とアメリカ人を描いて、文化の違いをさらりと的確に示すあたり
江国さんは実に頭の良い女性だな、と思ってしまいました。